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素敵な大人になりたいものだ。 coconoo doll は、球体関節人形の制作日記です。あと、ガーデニング DIY エンタメも少し。

取り返しがつかない思い。変わらない思い。大林宣彦「異人たちとの夏」

今週のお題「映画の夏」に参加させていただきます。

里山の人形師 coconooです。2回目です。

夏といえばホラー?。わたしが毎夏観たくなる映画、観てしまう映画は、大林宣彦監督の「異人たちとの夏」です。

あの頃映画 「異人たちとの夏」 [DVD]

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 ネタバレは避けたいので、粗筋も内容も最小限にしたいのですが、タイトルの異人たちは幽霊を意味します。

主人公の風間杜夫が、12才の時死に別れた両親に、自分がその両親の歳を五つも越えたころ、もう一度その幽霊と出会う。

人生の意味を見失いかけていた彼は、そのことで恋人(名取裕子さん)も作り、自信も取り戻してゆく。

そんな物語です。

ラストのシーンが無理矢理な今風ホラー仕立てで、興醒めとのレビューが多く、実はわたしもそう思うのですが、それでも観たくなる映画です。

父親役の片岡鶴太郎さんは、個人的には好きな役者さんではなかったのですが(ごめんなさい^_^。)この映画は別格。

両親への「ああしてやれば良かった。こうしてやれば良かった…。」その取り返しがつかない思いが、映画から溢れ、何度観てもすき焼きのシーンで泣いてしまいます。わたしは、今だに両親と食事をするとこのシーンを思い出してしまいます。

「孝行したい時に、親はなし。」そういった意味では、甘い感傷に満ちた映画かもしれませんが、親や恋人からの無条件の愛情にどう応えるのか?

わたしはこの頃、親孝行でも何でも、愛情はするものではなく、させてもらうものだと、つくづく感じています。若い世代に見て欲しい映画です。

 

話は突然変わるんですが、この映画で、わたしはある会社の就職面接試験を思い出します。2つの、全然別業種の会社なのですが…。

一つは、「君のお祖母さんが、君に逢いに突然上野からこの会社に電話をしてきた。君はここまでの道順をどう説明する?」

JRの何線で、何番ホームで、何番出口で、何通りを南へ5分の何とかビル。と言っても、絶対わからない。可哀想なお祖母さんを思い浮かべてしまうと同時に、なんて世代を越えた思いやりと、その人となりを見る、素晴らしい質問だと思い出しました。

もう一つは、「君たちには、2次面接に向けてこれから家に帰ったら、母親の足をタライに湯を汲んで洗って欲しい。」というものです。

試験を受けている若者は、訳も分からずその指示に従うのですが…。

2次面接の時、自分達が小学生の時のままの親のイメージから、想像していた以上に年老いて、痩せた足首に驚き、泣き出す若者もいたそうです。

面接官は「ここにいる全員を合格させるわけにはいかない。申し訳ないが、我が社はそれほど大きくはない。ただ、今まで支えてくれた者がいることで、ここにいることを心に刻むことができた人間は、何処に行っても大丈夫です。単に感謝しろと言っているわけではないことは、実行した者には分かってもらえると思う。」

 

わたしにも取り返しがつかない思いは、たくさんあります。我を通せばいいということでもない。

映画や小説でなけば、都合よく奇跡はおきない。だからこれからは、これ以上、そんな思いを抱えて生きることのないよう、生きていきたい。

わたしのブログで、この映画を観る気になった方がいれば幸いです。(特に、若い男性諸氏には泣ける映画だと思います。)

 

 

今日も、来てくださって、ありがとうございます。